日本脳炎ワクチンについての一連のツイート
先日twitterで日本脳炎についてあれこれツイートさせていただきました。日本脳炎は、ウイルスに感染した豚を蚊が刺して、その蚊が人間を刺すことで感染します。千人に一人程度しか発症しませんが、発症すると2〜4割が死亡、死亡しなくても半数以上に神経障害を残す恐ろしい病気です。— HAL@36歳女医 (@halproject00) 2017年7月3日
根本的な治療法はないので、蚊に刺されないorワクチンで予防するしかありません。
ですので、チェックすべきは豚の間での流行具合。— HAL@36歳女医 (@halproject00) 2017年7月3日
流行している地域は特に注意が必要です。(白は未調査)
蚊が増えてきます。日本脳炎ワクチンを接種する時期のお子さん、お早めにご予約&受診をお忘れなく。
うちもやっと、2回目接種です。https://t.co/gaRihh5Xso pic.twitter.com/Z7HYBicht1
日本脳炎は、日本脳炎のワクチンスケジュールは、1期3回+2期1回で合計4回になります。— HAL@36歳女医 (@halproject00) 2017年7月3日
平成7〜18年度に生まれたお子さんは、そのうちどれかをうち損ねている可能性がありますので、是非母子手帳などをご確認ください。20歳までは公費で接種できますので各市町村までお問い合わせください。
日本脳炎ウイルスに感染した豚を蚊が刺す
→ 日本脳炎ウイルスをもった蚊がヒトを刺す
→ヒトが日本脳炎ウイルスに感染する
という風に感染します。ヒトからヒトにうつるわけではないんですね。豚から(蚊を介して)ヒトにうつります。
日本脳炎ウイルスに感染しても、発症(症状が出る)のは1000人に1人程度なのですが、発症すると上記に書いてある通り、2〜4割が死亡、死亡せずとも半数が後遺症として神経障害を患うという、非常に厄介な感染症です。
なぜ日本脳炎ワクチンは3歳からが標準接種なの?
そもそもなぜ日本脳炎ワクチンが3歳からの標準接種とされているのか。調べてみると、2001年の国立感染症研究所のQ&Aに回答がありました。
古い内容なので他の情報は読み飛ばしていただきたいのですが、要するに「3歳未満は罹患の確率が低いわけではなく、他に優先すべきワクチンがあるから」というのが回答のようです。
更に国立感染症研究所の資料を探してみると、このスライド内に2005年〜2014年の小児の日本脳炎の症例の一覧が出てきました。
0歳から10歳まで幅広く、3歳未満が半数を占めます。
これを見ると、確かに3歳未満での感染の可能性が低い、という事はないですね……
やはり、感染の可能性が高い地域では、3歳より前倒しで接種する方がいいな、という印象をうけます。
6ヶ月以降からの日本脳炎ワクチン接種スケジュール
3歳未満のワクチン接種については、日本小児科学会が「日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について」という文章を発表をしています。・日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児
・最近日本脳炎患者が発生した地域&ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児
に対して、生後6か月からの日本脳炎ワクチン接種開始を推奨しています。
ワクチンスケジュールを、日本小児科学会の文章から引用します。
生後6ヶ月から2回接種(不活化ワクチンなので接種間隔は6日以上)、その後初回追加を1歳頃(初回免疫終了から6ヶ月以上)に1回。そして2期はこれまでと標準的な接種スケジュールと同じく、9歳〜13歳未満です。
1期だけを前倒しにするんですね。
3歳未満はワクチンの薬液量が少ないのが特徴です(それでも2期までの免疫は十分つくとされています)
6ヶ月以降3歳未満の日本脳炎ワクチンの費用は? 公費?
twitterで「早くうちたいから自費で接種しようかな……」
という反応をいただきましたが、6ヶ月以降であれば公費で接種可能です。定期接種の対象で、1期から無料(自己負担なし)で接種できます。
対応について、もしかすると各自治体で差があるかもしれません。
「日本脳炎ワクチン (市町村名)」
で検索をしてみてください。当該ページが出てくるかと思います。
もし適切なサイトが出て来なかった場合は、直接市町村にお問い合わせください。
3歳未満の日本脳炎ワクチン接種の問題点・ワクチン不足の話
現在問題なのは、自治体や医院によって対応がまちまちであるという事です……理解のあるところもあれば、「3歳でいいんじゃない?」という反応をされる事もかなり起こっているようで、これはぜひ啓蒙をすすめて欲しいところです……。
私としては、日本国内であればどこでも旅行する機会もあるのだし、前述の文章を見る限り、3歳以降にあえてする意味もあまり感じません。
他の予防接種スケジュールとの兼ね合いもありますが、ブタの日本脳炎抗体保有率(要するにブタが日本脳炎のウイルスに感染していますよ、という率)が高い地域にお住まいの方は、一度かかりつけの病院に問い合わせてもらえたらな、と思います。
国立感染症研究所によるブタの日本脳炎抗体保有状況 2017年最後の報告から画像引用します。
https://www.niid.go.jp/niid/ja/je-m/2075-idsc/yosoku/sokuhou/7711-je-yosoku-rapid2017-12.html
こちらに細かい数値があります。白の部分は未調査です。抗体陽性率80%を超える地域が沢山ある事がわかるかと思います。
そして、まだ日本脳炎ワクチン、不足しています。
徐々に生産が追いつくはずですが、ワクチンは急に増産できるものでもありませんので、まだしばらく品薄状態が続きます。
優先されるべきは、まずは初回免疫(初めて最初の2回分の日本脳炎ワクチンを接種する)の子供です。これは3歳以上だけではなく、6ヶ月から3歳未満のお子さんも含まれます。
地域によって、なかなか予約もとれないかと思いますが、これから蚊の季節です。8〜9月に日本脳炎の患者さんが多く出ています。ぜひそれまでに、初回の接種をしたいところです。
ちなみに、私の住む地域では、在庫の不足はないようでした。夏休み前だったので、タイミングがよかっただけかもしれません。
ですので、
「でも不足しているかも……」
と悩むより、まずは電話をかけてみましょう。
娘3歳、いろいろありましたが、やっと初回免疫の2回、終了しました。
虫除けで蚊対策はしていきますが、とても怖かったのでほっとしているところです。
忙しかったり、子供さんの体調がなかなかよくなかったり、ワクチンスケジュールに目が回りそうになっているかもしれませんが、日本脳炎ワクチンの事、少しでも考える機会になれば幸いです。
参考サイト
IDWR感染症発生動向調査週報:読者のコーナー
http://idsc.nih.go.jp/idwr/faq2001-2.html#q0204
平成28年度感染症危機管理研修会資料(国立感染症研究所感染症疫学センター)
日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
https://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=197
ブタの日本脳炎抗体保有状況-2016年度速報第8報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-sokuhou/668-yosoku-rapid.html
日本脳炎とは・国立感染症研究所
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/449-je-intro.html
ブタの日本脳炎抗体保有状況-2017年度速報第12報
https://www.niid.go.jp/niid/ja/je-m/2075-idsc/yosoku/sokuhou/7711-je-yosoku-rapid2017-12.html
(記事は下に続きます)
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