授乳中の薬 飲んではいけない薬、安全に使える薬の調べ方

授乳中の薬 不安になった時の調べ方

授乳中に薬を飲んでしまった!

お母さんだって人間です。授乳中だからといって病気をしないわけではありません。
しかし、例えば頭痛が辛くても
「授乳中は薬を使えないから……」
と我慢をしてしまう方もいるかもしれません。
また、
「薬を飲んじゃったけど、考えたら授乳中だった!」
と焦った方もいるかもしれません。

授乳中に薬を飲むことはできないのでしょうか?

授乳中に薬を飲んでも母乳中に出てくる薬はごく微量

授乳中は絶対に薬が飲めない、薬を飲んだら必ず断乳しないといけない、それは誤解です。
実は、授乳中でも使える薬はたくさんあります

薬を飲むと、薬は吸収されて血液の中に入ります。母乳は血液からできていますから、薬は母乳中にも入ります(移行する、といいます)。
しかし、実際に母乳の中に入る薬の量はとても少ない量です。
また、その母乳を飲んだ赤ちゃんの体の中に届く薬の量は、さらに少ない量になります。
離乳食を開始していれば、赤ちゃんが飲む母乳の量も減り、影響はさらに少なくなるでしょう。

もちろん、薬には様々な種類があります。ごく微量でも赤ちゃんに影響が出る薬もありますので、授乳中のお母さんが飲んだ薬全てが赤ちゃんにとって安全というわけではありません

しかし、繰り返しますが、授乳中でも使える薬はたくさんあります

授乳中の薬について、現在の日本の添付文書はあてにならない(今後改善予定)

現在の日本の薬の説明書(添付文書)、母乳中に移行する薬は授乳を避けるよう書かれていますが、その科学的根拠は乏しいのが現状です。
最近見直しがあり、授乳婦の項目の記載方法が変わることになりました。これにより、これまでのような一律授乳を避けろという記載ではなくなります。2019年から5年間かけて、徐々に添付文書が差し替えられていく予定です。

しかし現状、まだ多くの添付文書には「服用中は授乳を回避させること」「服用中は授乳を中止させること」といったようなことが書かれているため、実際には使える薬であっても「この薬を飲むなら、薬を飲んでいる間は授乳しないでね」と言われてしまう事態となっています。

授乳中でも使える薬・使えない薬の調べ方

本当は、医師もしくは薬剤師に聞いてもらいたいところなのですが、上記のような事情があり、添付文書に従って処方や指導を行う先生も少なくないと考えられます。
そして、その指導を無視しろとは、とても私には言えません。
ですので、あくまでも「調べ方」だけこの場で紹介させていただきます。

一般の方向け


授乳中にお薬を使うにあたって知っておいていただきたいこと | 国立成育医療研究センター
https://www.ncchd.go.jp/kusuri/lactation/

国立成育医療研究センターのサイトに、授乳中の薬の使い方についての説明があります。
ここに、「授乳中に安全に使用できると考えられる薬(一覧表)」「授乳中の使用には適さないと考えられる薬」が掲載されていますので、まずはここを調べてみてください。

また、授乳と薬の電話相談も行われています。サイト内の一覧表やQ&Aなどを読んでもどうしても解決しないことがあれば、こちらの利用も検討されてください。

国立成育医療研究センターの授乳と薬のページでの具体的な調べ方

例えば、頭痛がするからロキソニンを処方してもらったんだけど、本当にこれ飲んで大丈夫かな……と思ったら、「授乳中に安全に使用できると考えられる薬(一覧表)」を開いて、


まず50音順一覧表で調べてみましょう。あいうえお順に並んでいますのでずっと下へスクロールすると

このように出てきます。ロキソニン発見。ん? ロキソプロフェンってなんだろう?
あ、そうだ。じゃあ、前に処方してもらったカロナールはどうかな? ……あれ? 載ってない?

薬の名前には、実は商品名一般名(成分名)があります。先ほどの例で説明すると、「ロキソニン」は商品名、「ロキソプロフェン」が一般名です。
国立成育医療研究センターの表は、一般名で記載されています(横に代表的な商品名は書かれています)。幸い、ロキソニンはほとんどそのままの名前なので、50音順でも見つけることができましたね。

カロナールの一般名はアセトアミノフェンなので、50音順の表で「アセトアミノフェン」で検索すればよいのですが……一般名がわからない時は「薬効順一覧表」の方が見つけやすいかもしれません。

こちらをみると、カロナールは「解熱鎮痛薬(痛み止め・解熱剤)」がどうやらあてはまりそうですね。
すると……

ありました。ロキソニンも同じところに入っていますね。

もちろんページ内検索を活用してもらって問題ありません。
もし一般名がわからない時は、googleで「(薬の商品名) 一般名」で検索してみてください。


医療者向け(専門的な内容)

そんなこと知ってるよ! という内容かもしれませんが、ご紹介いたします。

母乳とくすりハンドブック改定第3版のご案内 | お薬のことなら大分県薬剤師会へ
http://www.oitakenyaku.or.jp/2017/05/01/3534/
大分県薬剤師会が、母乳とくすりの情報をまとめてくれています。いくつかの文献を元に総合的に判断して指標を示してくれており、「屯用なら使用可」のように具体的な対応を書いてくれています。忙しくて一つ一つの文献を確認できない場合に便利です。
医療機関などであれば1冊1500円(送料込み)で販売されていますので、手元に1冊あると便利。
最初の第1版に関しては、pdfで公開されています。
http://www.oitaog.jp/syoko/binyutokusuri.pdf

Drugs and Lactation Database (LactMed)
https://toxnet.nlm.nih.gov/newtoxnet/lactmed.htm
NIH(アメリカ国立衛生研究所)が作っている、母乳と薬のデータベースです。一般名で検索すれば情報が出てきますので、オンラインで検索できる環境があればこちらから検索すると最新の情報が手に入ります。

番外編:添付文書について
医療用医薬品の添付文書等の記載要領に関する質疑応答集(Q&A)
https://www.pmda.go.jp/files/000227533.pdf
より、引用します。

【授乳を避けさせること】
・ ヒトで哺乳中の児における影響が認められているもの。
 ・ 薬理作用等から小児への影響が懸念され、ヒトでの児の血漿中濃度又は推定曝露量から、ヒトで哺乳中の児における影響が想定されるもの。
 「授乳を避けさせること」と記載する場合は、乳汁中からの消失等に基づき、投与後、授乳を避けるべき期間を合わせて記載することが望ましい。
 【授乳しないことが望ましい】・ 非臨床試験又はヒトで乳汁への移行が認められ、かつ薬理作用や曝露 量等からヒトで哺乳中の児における影響が懸念さ れるもの。
【治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること】 ・ 非臨床試験で乳汁への移行が認められるが、薬理作用や曝露量等からはヒトで哺乳中の児における影響が不明であるもの。
 ・ 非臨床試験等のデータがなく、ヒトで哺乳中の児における影響が不明
 であるもの。
・ 薬理作用又は非臨床 試験での乳汁移行性等から、ヒトで哺乳中の児における影響が懸念されるが、【授乳を避けさせること】及び【授乳しないことが望ましい】のいずれにも当てはまらないもの。
以下の場合には、「9.6 授乳婦」を設ける必要はない。
・ 非臨床試験で乳汁移行が認められていないものであって、薬理作用から哺乳中の児への影響が懸念されないもの。
このように変更されています。おそらく有益性投与の薬が増えるのではないかと思います(ちなみに妊婦に関しても同様の改定が行われます)ので、使い慣れた薬であっても一度添付文書に目を通してみるとよいかと思います(といっても、2019年から2024年までの5年間の間は新旧混在しますし、製薬会社さんがどこから改定していくのかわからないのですが……

授乳中でも上手に薬を使ってほしい


授乳にはメリットがたくさんあります。また、断乳してしまうと乳房トラブルの原因になりますし、また再開することが困難となることもあります。
薬の種類によっては断乳が必要な場合ももちろんありますが、可能であれば授乳を続けることができる薬を使うことが大切だと思います。

また、お母さんの体と心の健康も大切です。授乳中だから、赤ちゃんのために……と我慢をして必要な薬を飲まなかったことで、お母さんの病気をさらに悪化させてしまうことが、私はとても心配です。

授乳中でも飲める薬があるんだ。

ぜひそのことだけでも知っていてください。

そして大変な授乳期間中の病気を、なんとか乗り切ってほしいと思います。
(もしお友達が授乳中に病気になってお困りの際は、国立成育医療研究センターのページをすすめてあげてください。もしうまく解説できない時は、この記事をシェアしてもらっても構いません)

参考サイトなど





医療用医薬品の添付文書等の記載要領に関する質疑応答集(Q&A)
https://www.pmda.go.jp/files/000227533.pdf



(記事は下に続きます)
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