(2018年4月改訂しました)
まず結論から言うと、
- 生後6か月(遅くとも9か月)以降であれば、特に流行時には麻しんワクチン及び麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種を受ける事は可能
- ただし、免疫が十分につかない可能性があるので、1歳以降通常のスケジュールでMRワクチンの定期接種を受ける必要がある
というわけで、以下は詳しい解説など。
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基本は1歳からのMRワクチンの定期接種、合計2回
麻疹(はしか)の流行が懸念されています。流行させないためには、麻疹への免疫(抗体)を多くの人がもつ事です。是非積極的にワクチン接種を行ってください。
- 1歳のMR第1期
- 小学校入学前1年のMR第2期(4月1日〜3月31日まで)
この2回がMRワクチンの定期接種で、公費(つまり無料)で接種可能です。
もし1歳、小学校就学前の定期接種がまだのお子さんがいたら、できるだけ早く接種してください。
(記事は下に続きます)
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1歳未満でも任意で麻疹(麻しん・はしか)のワクチンは接種できます
そして、流行のきざしが見えたら(例えば、患者数が増えているというニュースがある、自分の住んでいる地域での発生が報告される、など)、1歳未満の赤ちゃんへの接種も検討してください。麻疹は空気感染します。感染を防ぐことは非常に困難です。現在公費では1歳と小学校就学前の2回、無料で接種することができます。
しかし、生後半年くらいから任意(自費)でワクチンを接種できます。
移行抗体は徐々に減る
麻疹の記事でも書きましたが、生後4か月頃から徐々に、母親から受け継いだ抗体(移行抗体といいます)が減少してきます。
抗体の量を調べたところ、生後5か月までは6割程度に麻疹の抗体が認められました(母親由来の移行抗体があるため)。
しかし、生後半年を過ぎた乳児(6か月〜11か月)では、なんと4%しか認められなかった、というデータがあります。
流行している地域では1歳未満でもワクチン接種を検討
流行していない時期に、わざわざ前もって1歳未満で麻疹ワクチン(もしくはMRワクチン)を接種する必要はない、と私は考えます。1歳の定期接種で十分です。しかし、流行のきざしが見えた場合、話は別です。
CDC(アメリカ疾病管理予防センター)の「mesles(麻疹)」文書を要約しますと、
アメリカは日本と同じく麻疹排除状態ですので、海外旅行、つまり麻疹流行地へ行く場合や流行地に住んでいる場合は、同様の判断でよいのではないかと思います。
海外旅行する時には、生後6ヶ月以上の人は麻疹から保護されるべきである。
6〜11ヶ月の赤ちゃんは麻疹ワクチンを1回接種。1歳前に接種した場合は、12〜15ヶ月でもう1回、更に28日以上あけてもう1回接種が必要
アメリカは日本と同じく麻疹排除状態ですので、海外旅行、つまり麻疹流行地へ行く場合や流行地に住んでいる場合は、同様の判断でよいのではないかと思います。
乳児に麻疹のワクチンを接種する場合、何ヶ月から何回接種が必要か
では実際、いつ頃から麻疹ワクチン及びMRワクチンが接種可能(接種が妥当)でしょうか。日本ワクチン産業協会の「予防接種に関するQ&A集」が詳しく日本語で解説を書いてくれています。医療従事者向けなので、ちょっと内容が難しいです(全文に興味がある方は、http://www.wakutin.or.jp/medical/を参照してください)。かいつまんで解説すると、
移行抗体は4〜6か月でほぼ消失するため、麻疹流行地では6か月から麻疹ワクチンを接種している国もある。日本でも6か月〜任意接種可能。ただ、ワクチンの効果と安全性は十分には評価されていない(症例数が少ないためと思います)
周りで麻疹の流行があり、緊急避難的に0歳でワクチン接種を受けた場合、0歳での接種は1歳以上での接種に比べて、免疫の獲得が十分ではないことがあるため、1歳になったら忘れずにMRワクチンを受けること。第2期も同様に、小学校入学前1年間にMRワクチン接種を受ける事(つまり、3回接種が必要)
ということでした。
また、製薬会社の見解も見ましょう。麻しんワクチン(ビケンCAM)のインタビューフォームには、
生後 6 カ月以後は麻疹罹患の可能性がある。乳児はしばしば重症になるので、罹患の恐れがある場合にはワクチンを接種してさしつかえない。移行抗体によるワクチン効果への影響は、それほど大きいものではないと考えられるが、12 カ月前の接種の効果があがらなかった可能性を考慮して、12 カ月以降に定期接 種として再び接種を行うことが望ましい 。
とあります。
また、北里第一三共ワクチン株式会社のQ&Aでは「通常9か月から接種可能」とあります。
- 生後6か月(遅くとも9か月)以降であれば、特に流行時には麻しんワクチン及び麻しん風しん混合(MR)ワクチン接種を受ける事は可能
- 1歳未満で1回接種。ただし、免疫が十分につかない可能性があるので、1歳以降通常のスケジュールでMRワクチンの定期接種を受ける必要がある(合計3回接種)
ということで問題ないと思います。
しかし、施設によっては1歳未満でのMRワクチン(もしくは麻疹単独ワクチン)の接種例がなく、対応できない、というところもあるかもしれません。
受診前に、是非予約を取り、その際に「今○か月なのですが、任意接種で構わないのでワクチン接種することはできますか?」と問い合わせておくと、話がスムーズに住むかと思います。
今後流行が起きない事を心から祈っていますが、患者の発生が認められる地域に住んでいる、旅行の予定があるといった、リスクの高い環境にあるのであれば、乳児(生後12か月未満)への麻疹ワクチン接種をご検討ください。
2018年、沖縄県で麻疹流行の兆しがあり、6ヶ月〜12ヶ月未満の赤ちゃんへの公費の補助が決まりました。自治体により差はあるようですが、県が半額は助成するという報道もありましたので、各自治体の対応をチェックしてみてください。(手作業で調べられる範囲まとめました)
沖縄県各自治体の麻疹(麻しん・はしか)ワクチンの助成(補助、無償化)一覧 6ヶ月〜1歳未満の赤ちゃん含むhttps://halproject01.blogspot.jp/2018/04/61.html
ちなみに、ワクチン以外の予防方法は、一応N95マスクというのがありますが、大人でも苦しいです……一応子供用もあるようですが、
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そもそも、大人でも苦しいものが赤ちゃんにつけれるわけないです(断言)。大人が自分の感染予防に使うならまだしも……?(それでも効果としては、漏れがあったらアウトですので、全くお勧めしません。医療機関では診察時に使用しますが)
麻疹は命を奪いうる重篤な感染症であり、後遺症を残すこともあります。また、一度治ったように見えて、大きくなった頃に様々な神経症状が現れ、死に至る可能性を秘めています(SSPEと呼ばれる非常に恐ろしい合併症です)。
副反応が怖いからという理由でワクチンを拒否される方がいらっしゃいますが、麻疹にかかる方が何万倍も恐ろしい、ということをどうか念頭においておいてください。
これ以上の感染拡大がないことを祈りますが、県内で流行が始まった時などには、ワクチン接種の検討もされてくださいね。
参考サイト
http://www.wakutin.or.jp/medical/http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
非常にわかりやすいIDSC(国立感染症研究所)の麻疹のQ&A。
Measles: Make Sure Your Child is Fully Immunized | Features | CDC
https://www.cdc.gov/features/measles/index.html
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