熱が出たので小児科に行くと、風邪と診断。
家で様子を見るように言われたのだけと、そんな時に
「熱を下げたくて冷やしたのに、寒いと嫌がられた……」
なんて経験のある方もいるかもしれません。
逆に、
「風邪だからあたたかくしてあげようとしたら、汗だくになって苦しそう……」
という方もいるかと思います。
今回はそんな、「風邪の時の発熱時のホームケア・温め方、冷やし方」の話。
(発熱時の受診で悩んだ時には「こどもの救急(ONLINE-QQ) - 発熱(38℃以上)」もご利用ください)
体温は「体温調節中枢」で決まる? セットポイントの話
諸説ありますが、今回の話をするのにわかりやすいのでセットポイントの話をします。人間の体温というのは、脳の視床下部というところにある「体温調節中枢」で決められています。
ここで「体温を36℃にするぞー」と決めて、体のあちこちに働きかけて、体温を36℃になるように調節しているんですね。
そして、その体温の事を「セットポイント」と言います。
では、なぜ風邪になると熱が出る(体温が上がる)のでしょうか。
ざっくり説明しますと、風邪になると、体に入って来た病原体(ウイルスや菌など)と戦うために、免疫細胞が様々な物質(サイトカイン)を出します。サイトカインに反応してプロスタグランジンが産生され、それが体温調節中枢に作用して、体温のセットポイントを上昇させます。
要するに、体が戦うために出す物質に反応して、セットポイントが高くなって発熱するんですね。
熱が上がる時と下がる時、体はどんな反応をしている?
例えば「セットポイントが39℃、現在の体温が37℃」だったとします。すると、体温が低いので、体は熱を上げようと努力します。
熱が上がる時にガタガタ震えた経験はありませんか?
あれは筋肉をふるわせて熱を作ろうとしているんですね。
また、末梢の血管が収縮して、表面から熱が逃げるのを防ごうとしします(手足が冷たく感じたりします)。
逆に、「セットポイントは37℃、現在の体温が39℃」だったとします。
すると、体温が高いので、今度は体は熱を下げようと努力します。
末梢の循環をよくして、表面から熱を逃がそうとします(手足がぽかぽか温かく感じます)。
汗をかくことで、熱を下げようとします。
こうして、風邪の時は「現在の体温」と「セットポイント」の兼ね合いで、熱が上がったり下がったりするんですね。
熱がある時、あたためるべき? 冷やすべき?
この「熱が上がろうとしている時」に体を冷やすと、体は「いや、セットポイントはもっと高いんだから、もっと熱を上げねば!」と必死で筋肉を震わせようとします。ガタガタ寒く感じる度合いが酷くなります。ですので、「寒いと感じている時は熱が上がっている時」と考え、無理に冷やさずにあたたかくしてあげましょう(あまり温めすぎると熱がこもりますので、苦痛じゃない程度に)。
逆に、熱が上がりきって「熱が下がろうとしている時」に無理に温めると、体は「いや、熱を下げなくちゃいけないんだ!」と更に多量に汗をかいたりして、本人は非常に暑苦しく感じます。
ですので、「暑いと感じている時は熱が下がっている時」と考え、あたためずに涼しくしたり、クーリングして冷やしてあげるとスムーズに熱を下げる事ができます。
つまり、先ほどのセットポイントと現在の体温の兼ね合いで、あたためたり冷やしてあげる必要が出てくる、というわけです。
まとめ
長くなったのでまとめます。- 寒く感じる時
- 手足が冷たい時
- ガタガタ震える時
→熱が上がっている時なので、無理に冷やさない
本人が気持ちよいと感じるのであれば、頭やおでこなどを冷やすのもよい(熱を下げる意味ではなく、楽にするという意味で)
無理に温める過ぎる必要もありません、苦痛じゃない程度に調節しましょう。
- 暑いと感じる時
- 手足がぽかぽか温かい時
- 汗をかいている時
→熱が下がろうとしている時なので、涼しくしてあげる
クーリングをするのであれば、首やわきの下(腋窩)、鼠径部といった大きな血管が体の表面近くを走っているところを冷やしてあげると効果的。
極端なクーリングはせずとも、体を濡らしたタオルなどでふいてあげるだけでも本人の苦痛が和らぐ時があります。
また、発熱時は脱水に注意が必要です。多めの飲水を心がけてください。あまりに飲めず、尿が少ないなど脱水が疑われる時には、OS-1やアクアライトORS(乳幼児用)などの経口補水液の使用も考えましょう。
いざという時のために、少量でも家庭に常備しておくことをおすすめします。
大塚製薬
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和光堂
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番外編:解熱剤は使うべき?
発熱は決して悪ではなく、病原体と戦うにはある程度熱が高い方がよい、という側面もあります。ですので、「熱が出たから下げなくちゃ!」と考える必要はありません。しかし、あまりに高熱が続くと、十分な休息ができません。
眠れない、食べれない……では、体が消耗してしまいます。それもよくない。
ですので、
「38.5℃以上かつ、熱が高くて眠れない、食事もできない」
……という状態では、解熱剤を使う事も考慮しましょう。
逆に、高熱でも元気にしていれば、無理に下げる必要はありません。
ただし、41℃を越えるような熱が出る場合は必ず受診してくださいね。
番外編:冷えピタは使うべき?
冷えピタをはじめとした冷却ジェルシートの類に、全身の熱を下げる効果はありません。あくまで「気持ちいい」のであれば使う、程度のものとご承知ください。
ただ、この冷却ジェルシートは、鼻や口を塞ぐと窒息の原因となりますので、乳幼児への使用はご注意ください。
特に保護者の目が届かない時(睡眠時など)に使用するのは危険を伴う事をご承知ください。
(ちなみにうちの娘は冷えピタ大嫌いなので、冷えピタ大好きな旦那は淋しそうにしています)
参考サイト
発熱のメカニズム|体温の基礎知識|体温と生活リズム|テルモ体温研究所
http://www.terumo-taion.jp/health/temperature/06.html
(記事は下に続きます)
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