熱中症対策〜乳幼児の予防を中心に〜

暑くなってきました。本当に暑くなってきました。
この蒸し暑さ、熱中症まっしぐらです。
どの年代でも起こる熱中症ですが、乳幼児含む小児は特別注意が必要です。

さてスマホでもPCでも見やすくよくまとまっているおすすめサイトが「熱中症ゼロへ」という一般財団法人日本気象協会が推進しているページ。

熱中症ゼロへ - 日本気象協会推進
https://www.netsuzero.jp

症状や予防・対策、応急処置のポイント、今あなたの活動状況&住んでる地域では熱中症の危険がどのくらいあるのか……? などがまとめられています。出先なんかで「まずい、すごく暑いから熱中症怖いんだけど、なにをすればいいかわからない……」という時にはこちらを見てみてください。ブックマークおすすめ。


上記のサイトで概要は十分にわかりますが、今回は乳幼児の予防と対策を中心にまとめてみようと思います。


なぜ大人と比べて乳幼児の熱中症対策が必要か?


体が小さい

乳幼児はまず身長が低いので、地面からの照り返しをもろにうけます。(ちなみに犬などペットは更に身長が低いので、炎天下の散歩は本当に注意が必要です)
大人は「今日は風が涼しいから、日差しは強いけどあまり暑くないな」と思っていても、実は子供はものすごい暑さの中を散歩する事になってしまいます。
車高の低いベビーカーも同様ですね。
子供は、大人の2〜3℃は暑いと考えていてください。たったの、と思うかもしれませんが、27℃と30℃はかなりの差ですよ。


また、体が小さいという事は、体積も当然小さいです。
2Lペットボトルのお茶と500mlペットボトルのお茶。冷蔵庫に入れたらどちらが早く冷えると思いますか?
当然、小さい方のお茶が冷えますね。
熱くする時も同じですね。
体が小さいという事は、それだけで外気温の影響を受けやすいんだ、という事も頭に入れて置いてください。


体温調節機構(発汗能力など)が未発達

暑い時、汗をかきますね。汗をかけば、気化熱で体温を下げる事ができます。
赤ちゃんは汗っかきと言われますが、実際には汗をかく能力は大人より低いです。
十分に汗がかけないので、どうするかというと、皮膚から放熱します(頭や胸・背の皮膚の血流を増やして、そこから熱を放散する)。
ところが、皮膚の温度よりも周囲の環境温度が高かったらどうなるでしょう。
体の熱を下げる事ができません

こうしてうつ熱が起こり、熱中症につながることになります。

自分でうったえることができない

そして、乳幼児は自分から「暑い」と訴える事ができません
また、体の不調にも気づけません。気づいているのかもしれませんが、不調かどうかわからなかったり、うまく言語化できなかったりします。
また、遊びに夢中になって、喉が渇いていても水を飲む事を忘れてしまいがちです。



それでは、具体的にどんな乳幼児の熱中症対策が必要か、解説していきます。


車の中は特に危険! 絶対に置き去りにしない!


車は、夏場は短時間でもものすごい気温になります。
外気温が28℃でも、窓を閉め切っていれば、20分で車内は45℃まで上がります
窓をあけていても、駐車場は直射日光が強かったり、地下駐車場でも空気がこもっています。

「寝てるから起こすのはかわいそう……」
「ほんの短時間だから、ちょっと買い物の間だけ……」

だめです。寝てるところを起こしても、泣いて不機嫌になるだけです。死にはしません。
しかし、車に放置すれば、死に直結すると思ってください。

車には、絶対になにがあっても、子供を放置しないでください。

暑い日は無理をしない

基本はこれです。暑い日は無理をしない。
暑さになれさせようと、無理に炎天下、日陰もない公園で長時間外遊びさせたりすれば、熱中症の危険が高まる事は想像がつくと思います。
無理をしない、させない
日陰を利用したり、涼しい場所に避難する
そのくらいでも十分暑さにはなれますし、汗もかきます。日本の夏は伊達じゃありません。(暑さになれさせる話は、文末で解説しています)

家でも油断しない

乳幼児の熱中症の多くは、実は家庭で起こっています
家だから安心と思わず、環境を見直しましょう。


  • すだれなどを利用して、直射日光が窓から差し込むのを遮りましょう。
  • 向き合う窓をあけて風通しをよくしたり、扇風機などを利用して空気の流れを作りましょう。
  • 温度が28度を越えると熱中症の危険が高まります。室温や湿度をチェックして、エアコン
  • (空調・クーラー)を活用しましょう。


環境に配慮して、エコ、消費電力を減らそうと努力する事はとても大切な事です。
しかし、健康を害してしまっては元も子もありません。
ぜひ、まずは健康を維持するつもりで、クーラーを上手に使ってください。

夜、寝ている時も熱中症は起こります。
涼しい寝具を利用する、扇風機で風の流れを作る、クーラーを利用する……しっかり睡眠をとること自体も熱中症の予防につながります。
夜も油断せずに過ごしましょう。


水分補給は適切に!

まずは自由飲水は必須です。要するに「喉が渇いたら自由に水分を摂れる」という環境を作っておきます。外出時には必ず水分を携帯しましょう。

さらに、暑い時期はこれでは足りません。
というのも、喉が渇いた時には、すでに体の中から水分が奪われた状況(脱水の手前)です。
また、子供は遊びに熱中しすぎて、水を飲む事を忘れて遊んでしまいます。
ですので、汗をかくような暑い時には「定期的に、喉が渇く前に飲水を促す」という方法をとります(強制飲水、という言い方をする事もあります)


通常の活動をしている時は水やお茶(カフェインを含むものは水分補給に適切ではありません)を飲めば十分です。
汗を多量にかく場合には、0.1〜0.2%の食塩を含む食塩水を随時補給します。市販のイオン飲料は糖分が高いのでおすすめしません(特に大人用のものなどは糖分が高過ぎて、逆に脱水を起こす可能性があります)。
0.1〜0.2%の食塩水とは、1リットル(1000ml)の水に1g〜2gの食塩を溶かしたものです。塩ひとつまみ(親指、人差し指、中指の3本指でつまむこと)で約1gになります。作り間違えには注意してください。必ず大人が味見してみましょう。

熱中症を起こしてしまった場合は、水分を効率的に補給するため、経口補水液を用います。暑い事が予測されるおでかけの時には、小さいものでいいので製品の経口補水液を携帯する事をおすすめします。
by カエレバ


子供におすすめするのはこのアクアライトORSですが、紙パックなので、持ち歩くのが大変であればゼリー飲料になったOS-1をおすすめします。OS-1であれば大人も利用出来ます。もちろんペットボトルタイプでも可。
by カエレバ

自分で経口補水液を作ることも可能ですが、作り間違えも多いですし、保存も効きません。
できれば製品化された物をご利用ください。(自作の経口補水液の作り方はこちらで解説しています


涼しい服装を研究しよう

熱のこもらない、通気性のよい服がおすすめです。
また、黒っぽい色の服は輻射熱を吸収して熱くなります。薄い色、淡い色の服がよいでしょう。
帽子をかぶる事も大切です。大きいつばのあるものや、首回りもカバーするような日よけがついたものを選ぶとよいでしょう。

大人が様子を見てあげましょう


顔が赤い、逆に青ざめている、汗のかき方がおかしい(汗が出ない、もしくは異常に出る)、体を触ると熱い、頭を痛がる、足下がふらついている……
これらは熱中症のサインです。
すぐに涼しい場所に移動し、横にして休ませ、水分補給をしましょう(この場合は、すでに熱中症を起こしているので、できれば経口補水液など塩分が入っているものが好ましいです)。
また、首やわきの下、鼠径部などの大きな血管が表面に出ている部分を中心に冷やして、体温を下げてあげましょう。

すでに意識がもうろうとしている時は、医療機関へ。



暑さに馴れさせる方が大切だと思うあなたに「暑熱順化」の話



暑さに馴れさせようとするのは大切ですが、急激に行えば当然熱中症のリスクは高まります。
暑さに馴れる事を「暑熱順化」といいます。
環境省が出している熱中症環境保健マニュアルによると、
暑熱順化は、「やや暑い環境」で「ややきつい」と感じる強度で毎日30分程度の運動(ウォーキング など)を継続することで獲得できます。実験的には暑熱順化は運動開始数日後から起こり、2週間程 度で完成するといわれています。
とあります。1日30分ですよ、30分。
やや暑い、ややきつい。外遊びをちょっとすれば、30分なんてあっという間です。
一日中、暑くて汗だくになるような家の中で、無理にクーラーもつけず過ごす必要はない、と考えてください。


まとめ

今回の話、一日中ガンガンに空調の効いた涼しい部屋の中で過ごせ、という話をしているわけではありません。
でも、「暑さになれさせるために!」と、無理に家の中で夏の真っ盛りにクーラーも扇風機もつけないで過ごさせる必要はないと私は思います。

まずは無事に夏を乗り切る事。
昨今の暑さ、異常です。温暖化やヒートアイランド現象により、熱中症の死亡者は平成7年には318人だった死亡者が、平成27年には968人と増加しています(平成22年は、なんと1731人!!!)。

「自分だけは大丈夫」

そう思っていた矢先に起こるのが熱中症です。
あなたのお子さんを守るため、もちろんあなた自身の健康を守るため、熱中症対策、頑張ってくださいね。


by カエレバ


参考サイト
環境省熱中症予防情報サイト 熱中症環境保健マニュアル
http://www.wbgt.env.go.jp/heatillness_manual.php
平成26年度環境省熱中症対策に係る地方自治体等担当者向け講習会資料(環境省)
http://www.wbgt.env.go.jp/pdf/kogi02.pdf
東京消防庁<安全・安心><トピックス><熱中症に注意!>
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/lfe/topics/201505/heat.html
年齢(5歳階級)別にみた熱中症による死亡数の年次推移(平成7年~27年)
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/necchusho15/dl/nenrei.pdf

(記事は下に続きます)
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