離乳食開始前に「食物アレルギーの検査って採血だけでできるらしいから、ちょっと受けて来ようかしら」というお母さんもいらっしゃるかと思います。
が、私は絶対に薦めません。
なぜか。
食物アレルギー検査の意義云々もありますが、単純な理由が一つあります。
それは、「赤ちゃんに採血するのはかわいそう」という理由です。
かわいそう? 痛いってこと?
それくらい、予防接種でも痛いんだし、いいじゃない?
と思われるかもしれません。
いいえ、違います。
赤ちゃんにとっての採血と、大人にとっての採血は、全く異なる点があります。
例えば大人が採血検査をしたとしましょう。10mlほど採血されるのはよくあることです。
献血を経験された方はおわかりでしょうが、これは非常に微々たる量ですね。400ml献血してもびくともしないわけです。
身体から15%の血液が急激に失われても循環に影響はないと言われています。成人男性では、大体4000ml、女性では3500mlくらいの血液が流れていますから、男性なら600ml、女性なら525ml出血しても大丈夫、ということです(もちろん、全く影響がないとは言いませんが)。
4000mlあるうちの10mlの採血なんていうのは、0.25%。痛いことを除けばなんの問題もないことは明白でしょう。
では赤ちゃんではどうか。
体重5kgの赤ちゃんの循環血液量は、400mlです。
なんと、献血一回分の血液しかないのです。
大人の1割しかないのです。
この赤ちゃんが、もし10mlの採血をされたとしたら?
(命に関わらなくても)「たかが採血」のはずが、実際には大出血であることがわかると思います。
どうですか、「かわいそう」と思いませんか?
私が小児科の研修医をしていた時、採血をするとなると検査部に問い合わせ、最低限何mlの検体が必要か計算し、一滴も無駄にしないように採血していたことを思い出します。
上級医の先生に、一番最初の注意事項として教えられたのは、この採血量だったかもしれません。
上級医の先生に、一番最初の注意事項として教えられたのは、この採血量だったかもしれません。
ついでに、もう一つ「かわいそう」な理由を追記しましょう。
それは、針の太さです。
大人に普段使うより細い針を使って採血しますが、それは比較の問題です。
赤ちゃんの血管の太さなどから考えると、すごく太い。大人で言うと、献血のぶっとい針くらいあります。
もっと細い針を使えばいいと思われるかもしれましんが、細過ぎると血液が壊れて検査できなくなるんですね。
ですから、大人が思うより、単純に「かわいそう」です。
もちろん、採血自体を否定しているのではありません。
不要な検査は、百害あって一利なし、ということを言いたいのです。
また別の項目で書きたいと思いますが、食物アレルギーの検査は、あくまでも補助的な検査です。どんなに悪い結果であっても、症状がなければ食物アレルギーとは言えないのです。
ですので、「健診のついでに」「念のため」で赤ちゃんに無駄な出血をさせることがないよう、こんな記事を書かせてもらいました。
実際にはアレルギー検査ではそこまで大量の血液は必要ありません。項目が増えるとそれだけ採血量は増えます。
が、「1mlも必要ない検査ですよ〜^ ^」は、大人の感覚とは違うことは、是非知っておいてください(念のためにと勝手に検査をする、悪徳なドクターがいるそうです……)。
小児科の研修の時、入院中の患児さんが、泣きもせずに採血をされていました。
長い闘病生活で、何度も検査されて、慣れてしまっているんですね。
細い腕を、自分で差し出していたあの子は、まだ5歳くらいだったでしょうか。
その姿が、とても印象的でした。
採血の時に泣き喚くのは、病院と無縁であるという、とても幸せなことなのだな、と。
(記事は下に続きます)
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