「免疫力」は医学用語ではありません〜健康本に思う事〜

健康本のコーナーに並ぶ"医学的ではない健康本"


Buzzfeed Japanで面白い記事を読みました。
一般向けの医学解説本や健康本は、私自身には一切役立つものはありません。ですが、ブログやtwitterで情報発信をするようになり、なにかわかりやすい一般書でお勧め出来るものはないかと覗きに行くようになりました。
しかし本屋に行って一般向け健康本を見て愕然とします。

な、なんでこんな怪しいタイトルの本が山ほど並んでいるんだ……?

手に取って開くまでもなく、恐らく内容は、「医学的ではない健康本」です。(トンデモ医学、似非医学とも呼ばれますが、そこまで酷いものかどうかは確認していません。)


「免疫力」は医学用語ではない

例えば「これをするだけで免疫力があがる!」みたいな類です。
免疫力。よく見かける言葉です。
しかしこれ、医学用語ではありません

医学用語として「免疫」は存在しますが、「免疫力」はなにを指しているのか、私には正直わかりません。(私も、いくつかの層を狙って「所謂『免疫力』」といった形で文章を書く事はあります)
免疫を司る全ての細胞とその働きを指しているとするならば、単純に「免疫力」をあげれば、自己免疫疾患やアレルギーを大量に引き起こす事になるでしょう

ところが、健康本ではこんな事は書いていません。なにかわからない、都合の良い力でしかない。
敢えて言うのであれば、この一般用語としての「免疫力」は、「病気にならない謎の力」を指しているのだと思います。

医者がもし「免疫力を上げる方法」の本を書いたとしたら

では、「病気にならない謎の力」と仮定して、医者がもし「免疫力を上げる方法」という本を書けと言われたら何を書くか。
恐らく、

  • バランスのとれた食事
  • 適切な睡眠時間
  • 規則正しい生活
  • 精神的なストレスを溜めない
  • 定期的な程よい運動
  • 太りすぎず痩せすぎない
  • ワクチンをうつ

こんな事を書きます。

しかし、考えてみてください。
こんな当たり前の内容の本、誰が買いますか?

また、医者が本を書くと、「エビデンスは……」「参考文献は……」と悩みながら、巻末に大量の参考文献が並ぶ事になります。
しかし、参考文献を気にする読者が、エビデンスの質に興味を持つ方が、一体どれだけいるでしょうか

真面目に医学的に書いた本は、全く面白そうではないのです。


"面白い"と"医学的に質が高い"事は両立するはずだ

書籍は売れなければ意味が無い。結局それが大前提で、こんな当たり前の話を書いて欲しいなんて出版社は思わないわけです。
そんなものより、「○○を食べるだけで病気知らず!」「医者にかからない方法はこれだ!」なんて本を出したい出版社の気持ちは、痛いほどよくわかります。


わかるからこそ、打開したいのです。

「面白いが、医学的に質が低い本」と「面白くないが、医学的に質が高い本」どちらを選ぶか。

ではなく、

「面白く、かつ医学的に質が高い本」を出して欲しい。

本を作るプロがいて、医学のプロがいる。
面白く、わかりやすく、かつ医学的に質が高い。
こんな本がこれから生き残って欲しい。

読者を小手先で騙し続けられる時代はもう終わる

去年のWELQ騒動にあったように、もう、読者が騙され続ける事はありません。
読む人が「この本は大丈夫だろうか……」と心配しながら読まなくてはいけないような、リテラシーを試されるような健康本ばかりでは、確実にこのジャンルは廃れていきます。

ウェブ上の健康情報は、プロではない人間が大量に関わっているので、法整備でもない限り、ある程度(検索結果の上位には表示されない、程度)以上の浄化は不可能だと思っています。

しかし、本は、プロが作っているはずです。

私は、本が大好きです。本は、もっと、価値があるもののはずです。

出版業界の方が、その本の価値を自ら貶めるような事をしない事を、心から願っています。

(HAL)

(記事は下に続きます)
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