ステロイドの話〜薬の主作用と副作用〜

ステロイドという薬について、過剰に警戒している方が多いと感じています。
ステロイドを悪者に仕立て上げ、「ステロイドを使わずにアトピーを治しましょう!」と自社製品を売りつけるという、所謂「アトピー商法」は、もう流石に廃れたかと思っていましたが……インターネットを見て回ると、まだまだ結構見かけますね。
「脱ステ」「リバウンド」……うーん……

今回は、ステロイドの副作用についての話、ではなく、そもそも副作用とはなにか、という前提の話をしたいと思います。



薬を出すと「副作用はあるんですか!」と真っ先に心配される患者さんがいらっしゃいます。

薬には「主作用」と「副作用」があります。
治療の目的となる作用が「主作用」であり、それ以外の作用は全て「副作用」です。

例えば、風邪薬の中にある鼻水止め、抗ヒスタミン剤を例にあげましょう。
風邪薬として使う場合、抗ヒスタミン剤の主作用は「鼻水を止める」であり、それ以外、例えば「眠気」というのは副作用になります(もちろん他にもいろいろあります)。
ところが、これが不眠の治療として使うとどうなるか。抗ヒスタミン剤の主作用は「寝付きをよくする」であり、副作用は「鼻水が止まってしまう」ということになります。
このように、同じ薬であっても、目的次第で主作用と副作用はいくらでも変わってきます。

薬だけじゃなく、例えばお水。これをのどの渇きに対して使うとすれば、主作用は「のどの渇きを潤す」であり、副作用は「尿が出る」なんかになるでしょう。
砂糖は、食事として使うと主作用は「大切なエネルギー源として働く」であり、副作用は「太る」。
薬のみならず、全ての事象は、見方次第で様々に形を変えます。薬の場合は、それを主作用と副作用に分けて表現されるというだけの話であり、副作用だけを取り出して論じるのはまず間違っているということがわかるでしょう。


医者が処方をする時、もちろん副作用については沢山考えます。
副作用があるのに、なぜ処方をするか。
それは「副作用によるデメリットよりも、主作用によるメリットの方が明らかに大きい」からです。
病気や、苦しみを主作用によって治す、もしくは抑えてあげたいからです。
患者さんを薬漬けにしたいと考える医者なんていません。それは、医者ではありません。
アトピーなんかに使われるステロイド外用薬の薬価を見てもらえばわかりますが、長く使われている薬なので基本的に非常に安いです。例えばロコイド軟膏0.1%は薬価16.50円
(1グラムあたりの値段)です。規格は5gや10gなので、1本80〜160円程度。原価を差し引くと、そこから得られる医者の利益なんてほぼないです(と、私は思います)。
じゃあ、薬漬けにして薬を止められなくしてリピーターを増やす?
NOです。そんな腕の悪い医者のところに患者さんは行かないでしょう?
それよりも、「あそこの病院に行くと、いい見立てをして、いい治療をしてしっかり治してくれる」という評判でのリピーターを増やすべく、医者は日々研鑽を重ねています(ついでに言うなら、正直なところ、医者はオーバーロードにひいひい言っているので、儲け云々の前に「なんでこの世から病気はなくならないんだ」と愚痴を言い合う状況です。リピーター確保よりも、商売あがったりなくらい病気がさっくり治ってほしい、と本気で考えてます)。

あなたや、あなたのお子さんがステロイドを処方されたとするならば、それがあなたにとって最適の治療であると判断されたため。それに尽きます。
ステロイドの副作用の話の前に、「副作用があるからステロイドを使いたくない」という点について、まず言っておきたい。
「効かないから使いたくない」というならわかります。
「副作用があるから使いたくない」は、本来の「治したい」という本質を見失った話です。
巷にあふれる「ステロイドの副作用」の話に詳しくなるのは大いに結構。
しかし、それであるならば、まず「ステロイドの主作用」にも詳しくなって、それからその二つを両天秤にかけてみてはいかがでしょうか。



うちの子が乳児湿疹で処方されているのは、ステロイド外用薬です。
副作用を知った上で、主作用を期待して使用しています。
真っ赤になった首をかきむしらずに、気持ち良さそうに寝ています。
使わずに済むようになるくらい、早く皮膚が丈夫になってくれるといいのですが……それは薬ではなく、時間が必要ですね。

追記:娘の乳児湿疹(アトピー性皮膚炎)は、しっかりステロイド外用薬を使い、半年ほどで無事に治り、今は毎日の保湿剤によるスキンケアできれいなお肌を保てています。

(記事は下に続きます)
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