公共の場での授乳問題のtwitterアンケート結果〜育児に不寛容って本当ですか?〜

公共の場での授乳についてのアンケートをtwitterで行ったきっかけ

「公共の場では隠してもダメですか? 電車で授乳する動画が問いかけること」BuzzFeed Japanに取り上げていただきました。

毎日新聞社のコラムでも取り上げていただきました。
「発信箱:「授乳」論争=小国綾子 - 毎日新聞」


2017年1月11日に、朝日新聞の「声」欄で、ショッピングセンターでの授乳に戸惑う大学院生の投稿がされ、その内容についてtwitter上で炎上しました。
「授乳は自然な事である」「気持ち悪い方がおかしい」などの授乳を擁護する側の意見もあれば、「場所をわきまえろ、モラルがない」「母乳信仰はやめろ」などの反対する側の意見……
いろいろ意見が出ていました。
しかし、私が一番気になったのは、これまでのベビーカー問題などと絡めて「この国は育児に不寛容だ」という意見でした。

果たして、本当にこの国は育児に不寛容なのでしょうか?
私自身育児中の身です。確かに不寛容と感じることがなかったとは言いません。
しかし、それ以上に毎日沢山の人に助けられ、笑顔で見守れているのを感じます。

本当で不寛容であるとすれば、多数の人たちが、「公共の場での授乳をやめてほしい」と感じているはずです。
確かにtwitter上でもその意見は多数見られましたが、実際にはどれだけの割合の人がそう思っているのでしょうか?
加えて、公共の場での授乳に、抵抗があるけれども許容出来る範囲の事なのか、許容できない範囲の事なのか、これについてもわけることで、「不寛容」について考察できるのではないかと考えました。


もう一つ気になったのは
「育児経験者でないからわからない」
「授乳してみればわかる」
「授乳経験したことがないなら引っ込んでろ」
という意見でした。
なるほど、それは一理あるのかもしれません。
しかし、私にとっては随分と心に引っかかる意見でした。
すごくモヤモヤしたこの気持ちをどう表現していいかわからない。
その答えを考えるためにも、授乳=最も育児に参加したであろう立場の「授乳経験あり」の方と、それ以外の「授乳経験なし」の方で受け止め方が違うのではないか? と、二つの群にわけてアンケートをとることにしました。
本当は年齢性別詳しくわけて行いたかったのですが、回答数を集めるために、シンプルにわけました。


以上から、以下のアンケートを開始することとしました。


公共の場での授乳についてのアンケート結果

アンケート結果より、閲覧用の分及び間違って投稿したと申告されたを除いて解析を行いました。(細かい票数がtwitterアンケートでは出ませんので、若干の数値の齟齬がある可能性があります。合計がおかしいのはそのせいです、申し訳ない)
統計学的なややこしい説明は、はしょっています。(気になる方はχ2検定してください。)
「有意差あり」と書いているのは、「統計学的に見て差がありますよ」という意味です。



グラフで見ると、ほとんど差がないように見えますが、この表の全ての項目において、授乳経験ありの群、授乳経験なしの群には有意差(p<0.01)が出ています。
  • 「問題なく授乳していい」と思っているのは、授乳経験無しの群が多い。
  • 「抵抗あるが、授乳していい」と思っているのは、授乳経験ありの群が多い。
  • 「授乳するのはやめてほしい」と思っているのは、授乳経験なしの方が多い。


更にわかりやすくするために、項目をわけて解析したものが以下になります。



抵抗の有無に関係なく、授乳していいかどうかについて解析したものがこちらです。
こちらで見ますと「授乳していい」の項目においては、両群に有意差はありません。

つまり、授乳経験の有無は関係なく、「公共の場において、授乳してもいい」と9割を超える人が考えているということになります。

一方で、授乳経験により差はあるが、授乳するのはやめてほしいと考えている人も1割弱いるということになります。


また、問題なく授乳していい=「抵抗がない」、それ以外を「抵抗がある」というくくりにして解析を行うと、どちらの項目でも両群において有意差(p<0.01)が出ています。
授乳経験がない群の方が、公共の場での授乳について抵抗がなく、授乳経験がある群の方が抵抗がある、という傾向です。

(「抵抗がある」というのは非常に曖昧な問いであり、特に当事者である授乳経験者からいくつか疑問の声が寄せられました。
「自分は抵抗があるが、他人がする分には抵抗がない」
これについては、実は経験者でない人も同じ悩みを持った方もいらっしゃったのではないでしょうか。もし自分がすることになったら? 自分の娘が、自分のパートナー、自分の母親が……
更には、自分の事、他人の事は、完全に分けることができる感情でもないとも思います。
その上で、「あえて選ぶなら」で選択してもらえたらよい。
そう考え、同じ選択肢で行わせてもらいました。)

この「授乳していい」というのには差がないのにも関わらず、「授乳するのはやめてほしい」のには差が出た。
加えて、「抵抗がない」「抵抗がある」のには差が生まれているのはなぜなのか。

ここからはあくまで仮説です。
授乳経験なしには男性と女性が含まれています。
男性の方が「問題なく授乳していい」と考えている方が多いのではないでしょうか。
これに対して、女性は、乳房を(ケープを使っていても)無防備に出すことに対して、抵抗がある方が多く、授乳経験に関係なく「問題なく授乳していい」とは思い難い傾向がある。
しかし、授乳する立場になることで「して欲しくないと思っていたが、やはりやむを得ないから、抵抗はあるが授乳していい」と考えるようになり、「授乳して欲しくない」から「抵抗あるが、授乳していい」に票が流れたのではないか?

これについては、男性と女性でわけてアンケートをとると、また違う傾向が見られるかもしれません(希望が多ければやろうかと思いますが……未定です)。

アンケート結果のまとめ

アンケート結果についてまとめさせてもらいます。
  • 「問題なく授乳していい」と思っているのは、授乳経験無しの群が多い。
  • 「抵抗あるが、授乳していい」と思っているのは、授乳経験ありの群が多い。
  • 「授乳するのはやめてほしい」と思っているのは、授乳経験なしの方が多い。
  • 授乳経験の有無は関係なく、「公共の場において、授乳してもいい」と9割を超える人が考えている
  • 授乳経験により差はあるが、「公共の場において授乳するのはやめてほしい」という人が1割弱いる
  • 授乳経験がない群の方が、公共の場での授乳について抵抗がなく、授乳経験がある群の方が抵抗がある

アンケート結果についての考察

アンケートの結果を見て感じる事は、「日本は決して育児(少なくとも授乳)に関して不寛容ではない」ということです。
9割を大幅に超える人が、「授乳していい」と答えているのです。
特に、この抵抗があったとしても「授乳していい」と考えている人が4割もいるという事実。これはまさに「寛容である」ことに他ならないのではないでしょうか。
twitterという小さな世界において、マイナスの意見を山ほど見かけました。
その小さな世界でのアンケートで、この結果です。
ですので、私はもう一度、声を大にして言いたい。

日本は、決して、育児に関して不寛容ではないですよ!

その一方で、どうしても公共の場での授乳を受け入れ難いと感じている人が、とても無視出来ない数いることもわかりました。
特に授乳を経験しても受け入れ難く感じている人もいます。
これは、どうしても授乳について、「乳房」を使う事に起因している部分が大きいと思います。
いかに授乳であり、赤ちゃんへの食料提供・安心提供であったと理解していても、これまでに「乳房は隠すものである」「乳房は性的なアピール力がある」としつこくしつこく教え込まれる社会です。
例えケープを使用していてもそれらを感じないようにしろ、ということは、授乳する側にとっても、授乳される側にとっても、非常に困難です。
その感じ方は人それぞれであり、無視出来る程度の事であり「問題なく授乳していい」と思える人もいれば、どうしても公共の場での授乳を受け入れ難い人もいるのは当然の事です。
私は、この点も看過していい問題だとは思いません。
少数だから、「公共の場での授乳を受け入れろ」というのは、私にはとても暴力的に思えます。
ですが、どうしても公共の場で授乳せざるをえない現実があります。


では、どうするか。
ここから先は、アンケート結果から考えた、私からの提案です。
皆様も是非考えてみていただきたい。そのために、まずは率先して私から考えたことを書かせていただきます。

「公共の場での授乳」をするために私からの提案

授乳に対する理解を深める

まず一つは、「授乳に対する理解を深める」ことです。
先ほどの仮説の通りであれば、授乳を経験したことで「抵抗はあるが、授乳してよい」へと考えが変化した方がいることになります。
そうであるのならば、なぜその気持ちが変化したのか。
つまり、授乳が実際はどのようなもので、どのように大変で、「なぜ公共の場で授乳しなくてはいけないのか」ということを、是非わかりやすく説明するというのはいかがでしょうか。
これで、数%の方が、なんとか「抵抗はあるが、授乳していい」と考えてくれるかもしれません。


しかし、それでも、6%程度の人はやはり公共の場での授乳を受け入れ難く感じることになります。
これに関しては、お互いに配慮をし合う必要があると思います。
どう配慮をし合えばよいのか、これについては私自身もうまく答えが出せません。

授乳する側としては、例えば、BuzzFeedの記事中でも紹介されていたような、授乳しているように見えない授乳服を使用するのも一つの提案でしょう。
(あまりいい写真のものが見つからず申し訳ありません)
もちろん、これでも「そういう問題ではない」という方もいらっしゃると思いますので、あくまで一つの案です。

ケープのデザインなどの工夫をする、というアイデアもあるかと思います。


「授乳歓迎」というアイデア

もう一つ私が提案するのは、「授乳可」でも「授乳優先」でもなく、ただ「授乳歓迎」のステッカーです。
例えばこんなデザイン。(もっとステキなものをどなたか作ってくれると願いつつ。この画像については著作権は放棄しませんが、非商用で「授乳歓迎」「育児応援」目的であればご自由にフリー素材としてお使いください。拡散大歓迎。文字などの改変もご自由に。万が一商用アイデアであれば連絡ください、使用用途の確認と大きい画像データお渡しします……商用に耐えられるかはわかりませんが)

「ここでは授乳を歓迎していますよ」というアピールがあれば、授乳する側は安心して授乳ができます。
逆に、授乳風景を目に留めたくない人は、その場を通る際には「授乳しているかもしれない」と考えて、注意する事が可能になります。
例えばこういう「授乳歓迎」というような表現があれば、多くの人にとって、快適な空間を作る事が可能ではないでしょうか(ショッピングセンターや飲食店など、お店にとっても、よいアピールになると思いますよ!)

その他にも様々なアイデアが出ると思います。
ぜひ、みなさんで考えていただきたいと思います。
私もまた考えて、情報発信していきたいと思います。


社会で取り組む育児

「授乳は経験しないとわからない。」
「育児は経験しないとわからない。」

それは私には「不寛容」に思えます。
そもそも、誰もが「育児」されてきたから、今ここに存在しているはずです。
そうであるならば、誰もが育児される経験をしているわけです。
社会みんなで育児に取り組んで欲しい。授乳を、育児を受け入れて欲しい。
私はそう思っています。

経験の有無ではなく、一人一人が、お互いの立場や意見を尊重し、その結果、今よりもっと育児がしやすい社会になることを祈っています。

(今回の記事についてのあれやこれやをnoteに書きました。興味のある方はどうぞ。無料で全部読めます。もし応援してくれる方がいらっしゃったら、缶コーヒー1杯分、投げ銭していただけると嬉しいです。
「公共の場での授乳問題のtwitterアンケート結果」を書いた私の深層心理
https://note.mu/halproject00/n/naba82a8559f5

結果については、恐らく様々な考察や解釈ができることと思います。
ですので、これはあくまでも私自身の考察に過ぎません。
この結果を元に、いろいろな議論をして、様々な意見を出してもらえたら、と私は思います。
アンケート結果についても、引用元を明記してもらえれば、ご自由にご活用してくださって結構です。
ぜひ、みんなで考えましょう。


(記事は下に続きます)
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