麻疹のワクチン(予防接種)を受けていても感染・発症するのはなぜか

関空を始め、千葉、兵庫・尼崎などで麻疹が流行のきざしを見せています。
報道で「予防接種をうけていた」人も感染しているという情報を聞いて、戸惑っている方も多いのではないかと思います。

ここでNIID(国立感染症研究所)の「2013年度麻疹予防接種状況および抗体保有状況―2013年度感染症流行予測調査(中間報告)http://www.nih.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2262-iasr/related-articles/related-articles-410/4595-dj4104.html」を紐解いてみます。
麻疹ワクチンは1回の接種で95%、2回の接種で99%(ほぼ100%)の抗体獲得率となっています。

ただし、その抗体獲得の基準となっているのは、抗体価がPA法と呼ばれる方法で計測した時に、1:16以上で陽性となった場合です。
一方で、1:128以上(できれば1:256以上)でなければ、麻疹の感受性がある、と考えられています。つまり、抗体の量が不十分であるために、完全に麻疹を防ぐ事が出来ず、軽い麻疹にかかることがあります。
これを修飾麻疹と呼び、体内の中和抗体が麻疹ウイルスの増殖をある程度抑制させるため基本的に軽症ですが、人に感染させる感染源となり得ますので注意が必要です。

この修飾麻疹を前提に、前述のNIIDのサイトの図2を見ると、PA抗体価が1:128の人の割合は85%〜90%程度、1:256に至っては、80%ある年代が少ないくらいであることがわかります。
このため、麻疹が流行した際、ワクチンを接種していない人はほぼ感染・発症するのに加えて、ワクチンを接種していても、この抗体価が低めの2割程度の人が軽い麻疹を発症することになります。
今回の尼崎の保育所での「幼児はいずれも予防接種をうけていた」のに発症したというのは、これが原因だと考えられます。
残りの8割程度の園児は、おそらく十分量の抗体があったので発症していないのではないでしょうか。

結論として、ワクチンは決して無駄ではありません。
体質により、抗体のつきかたには個人差があります(同じ量のお酒を飲んでも、へべれけになる人と全く酔わない人がいるようなものと考えてもらえるとよいかと思います)。
ワクチンをうたずに麻疹に感染するのと、ワクチンをうって感染するのでは、その重症度が違う、ということを覚えておいてください。

定期接種がまだのお子さんをお持ちの方は急いで小児科へお問い合わせください。
MRワクチン、麻疹単独ワクチン共に不足しています。
流行地の0歳児(生後6か月〜1歳未満)の方も、必要に応じて任意のワクチン接種をご考慮ください。(生後1歳(12か月)未満の麻しんワクチン・MRワクチン接種は可能か

その他麻疹の記事については、「麻疹情報まとめ(当ブログ内)」をご覧ください。


参考サイトなど
http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/QA.html
http://www.nih.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2262-iasr/related-articles/related-articles-410/4595-dj4104.html




(記事は下に続きます)
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