乳幼児期のピーナツ使用・除去とピーナツアレルギーの関係についての論文

The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINEという医学雑誌にて、2015年2月23日に掲載された論文「Randomized Trial of Peanut Consumption in Infants at Risk for Peanut Allergy」が興味深いのでご紹介します。

妊娠中にピーナッツを避ける必要があるか、という内容の記事を書いたことがありますが(妊娠中の食事と赤ちゃんの食事アレルギーの関係は?)、これは主に乳幼児期のピーナッツの消費が、その後のピーナッツアレルギーの発症に関与するかどうか? という内容です。
欧米諸国ではピーナッツアレルギーの増加が問題視されていて、2000年にはリスクが高い乳幼児や妊婦の食事からピーナッツを除去することを推奨していましたが、実際にはこれは効果がなかったために2008年に取り下げられています。
他にも、離乳食期にピーナッツを使う地域(イスラエル)と使わない地域(イギリス)で同じ人種(ユダヤ人)で比較をしてみたところ、ピーナッツを使わない地域の方がアレルギー発症が十倍多かった、という研究結果もあります。

今回の研究は2006年から2009年にかけて、そもそも皮疹や卵アレルギーといった、今後ピーナッツアレルギーを起こす可能性が高そうな4〜11か月の赤ちゃん640人に、ピーナッツを5歳まで避けさせた群と1週間に3回以上の食事で、6g以上のピーナッツタンパクを食べさせた群にわけて比較した、というものです(個人的には、ピーナッツをそんなに料理に入れるのって結構大変と思うのですが、欧米では普通なんですかね?)。

結果をざっくり言いますと、最初のプリックテストで陰性の(もともとピーナッツアレルギーはなかったであろう)グループでは、60か月(5歳)でピーナッツを避けた群では13.7%にピーナッツアレルギーがありましたが、ピーナッツを与えた群では1.9%しかいませんでした(P<0.001、有意差ありという意味です)。
また、プリックテストで陽性の(もともとピーナッツアレルギーの可能性が高かった)グループでは、ピーナッツを避けた群では35.3%にピーナッツアレルギーがありましたが、ピーナッツを与えた群では10.6%しかいませんでした(P=0.004)。

要するに、「乳幼児期にピーナッツをほどよく食べさせる方が、全く食べさせないよりも免疫寛容が上手に進み、ピーナッツアレルギーになりにくい可能性がある」、という内容になります。

しかし、いくつかこの論文には問題点があります(筆者の方々も述べておられますが)。ピーナッツアレルギーが途中で出たりして中止をしたり、研究デザインに合わない子どもが1割くらいいたので、その結果が反映されていないこと、そもそもアレルギー素因がない赤ちゃんの研究ではないので、誰しもにあてはまるものじゃないこと、プラセボで比較していないこと等々あります。
ですので、この結果を丸ごと鵜呑みにして「今日からピーナッツをあげなくちゃ!」と思う必要は全くありません。
が、今後、この研究を元にして、また新たな研究が行われることと思います。


興味のある方は全文がこちらで読めます(英語です)。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1414850



自分の子どもがアレルギー素因があり(旦那が小児期にアトピー、結構重度の喘息で、現在もたまに発作が出る)、乳児湿疹もひどく、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーの論文などをいくつか読むことになりましたが……
結論がない問題ではありますが、あくまで私見にはなりますが、「予防的にアレルゲンになる食物を極端に除去することは、むしろその後の食物アレルギーに繋がる」、「いろいろな種類の食材を、偏らずに食べる方がよい」、「なにごともほどほどに(食べさせ過ぎ、除去し過ぎは避ける)」というのが現在の食物アレルギーの研究結果なのかなあ、と思います。
離乳食期、どうしても食べさせる食材に限りもありますし、アレルギーを起こしやすい食材は避けてしまう親心。
上手に食べさせていかないとなあ、と改めて考えさせられました。

さて、ピーナッツ、食べさせてみようかな(笑)。日本はそもそも、あまりピーナッツ文化ではないので、料理に使うっていうのは難しいかもしれませんね(だからこそ、比較的ピーナッツアレルギーが問題になっていないのかもしれませんが)。



(記事は下に続きます)
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